雪鬼屋温泉記

ソフトハウスキャラ	WindowsXP/Vista/7	800x600
9240円（税込）	1Play7時間	属性：経営SLG
難易度：8	2011/6/24発売	オススメ：☆☆☆☆

3年の間、温泉旅館を経営

雪鬼屋という温泉旅館で生まれ、祖父母に育てられた主人公。そんな主人公の夢は旅館の後を継ぎ、親代わりだった祖父母に恩返しをすることだった。ところが、主人公が大学卒業を目前に控えたある日、祖父母は事故で亡くなってしまう。しかも、遺言によって旅館の相続には条件がつけられていた。その条件とは3年の間、旅館を経営すること。主人公は経営コンサルタントの猫ノ宮秋風を女将として、旅館経営に乗り出すのだった。

6人のヒロインが登場するけど、どのルートでも主人公の本妻となるのは茜扇弓音だ。それ以外のキャラは妾となる

©ソフトハウスキャラ

ソフトハウスキャラ得意の箱庭系経営SLG。プレイヤーは旅館を増改築し、仲居を雇い、宣伝や営業活動をして売り上げアップをめざしていくことになる。ちょっと注意しておきたいのが、周回数によってシナリオが固定されているということ。初回プレイではキャラを攻略することはできず、ただひたすら旅館経営をすることになる。2周目は婚約者である茜扇弓音ルート、3周目では幼なじみで後輩の緋川杏ルートと、周回数によって攻略できるキャラが決められているわけだ。1プレイのプレイ時間は一般的なAVG作品と大差ないレベルなんだけど、全イベントを見るためには最低でも9回プレイする必要があり、トータルでのプレイ時間は満足のいくボリュームだろう。ただ、このゲームシステムがプレイの満足度を上げているかというと、やや疑問だったりする。

まず第1に、周回によって攻略するキャラは変わっても、ゲームとしてプレイヤーがやることは変わらないということ。一応、周回によって景気が変動したり、旅館施設の初期配置が換わったりしてゲームの難易度は変化する。けど、難易度が変わっても黒字経営に持っていき旅館ランキングをあげるという目標が変わらない以上、最終的には同じようなプレイの繰り返しになってしまう。プレイヤーがゲームのクリアとは別に、自分なりの目標を設定してプレイしない限り（ひたすら美しい旅館をめざすとか、どこまで黒字を増やせるか挑戦するとかね）、オールクリアの前にダレてしまうんじゃないだろうか。

第2にキャラごとのシナリオの魅力に乏しいこと。どのキャラのシナリオであっても、旅館にヒロインがやってきて仲居として働くことになり、唐突にＨシーンに突入し、そのあとは短いＨシーンをいくつか繰り返してエンディングという流れは変わらない。およそ盛り上がりに欠けるシナリオなんだよね。キャラによっては宿敵との対決なんていうイベントが起きたりするけど、それも酷くあっさりと解決してしまうので、全くといっていいほど盛り上がらない。もっとメリハリのある、起承転結のはっきりしたシナリオにして欲しかったところだ。さらにゲーム終盤ではイベントが全て出尽くしてしまい、ひたすらターンを進めるだけになってしまうゲームバランスにも問題アリ。これもイベント発生条件にターン数制限をつければ、ゲーム全体にバランス良くイベントを配置することが可能だったはずなのだから、そのあたりにも気を遣って欲しかった。

©ソフトハウスキャラ

ただ、プレイしていてつまらなかったのかというと、そんなことはなかった。この作品には膨大な数の会話イベントが用意されていて、その会話イベントが面白かったんだよね。村おこしのために作られたマスコットキャラのクマンが、マナーの悪い観光客をフルボッコにしていたり、村会議員のお姉さんが業の深い腐女子だったりと、シナリオに直接関係しない、はっきりいってしまえばスキップで飛ばしても問題ない内容のものなんだけど、これがなぜか面白い。個人的に特に好きだったのが、単なるモブキャラの仲居さんたち。本作の仲居さんは名前もなければ、立ちキャラも目無しの汎用立ちキャラなんだけど、会話イベントでは妙な存在感を持っている。サバゲー場を作れば仲居さんチームが無敵を誇ったり、修学旅行生を宿泊させれば、女子部屋に侵入しようとする男子生徒をファランクスを組んだ仲居軍団が迎え撃ったりと、やたらと武闘派だったりするのが可笑しいんだよね。まったりと旅館経営をしながら、無数に用意された会話イベントを楽しむのが本作の正しい遊び方なんじゃないかと思ったくらいだ。

エロゲーにおいて最も重要なヒロインのイベントや、経営SLGとしてのゲーム性に難があり、万人にお勧めできる作品とはいえないなというのが、率直な感想だ。それでも、CGは差分抜きで97枚、シーン回想は185（その大部分がイベントともいえない会話だけど）あり、ゲームのボリューム的には納得のレベルだし、自分なりのルールを作って縛りプレイをする人や、なにげない会話イベントを楽しめる人なら、満足できるんじゃないかと思う。物語性やキャラのＨシーンを重視する人にはオススメ度☆3つ、上記の条件を満たせる人なら☆1つプラスして☆4つとしたい。

（by Suno）