LOOPERS

同じ一日を繰り返す“時の渦”に囚われてしまった少年少女たちの運命は!?

GPSを使った宝探しゲーム“ジオハンティング”に熱中する主人公・タイラ。夏休みのある日、久しぶりに再会した同級生、ヒルダとレオナと一緒に宝探しに興じていると、不可解な現象に巻き込まれてしまう。同じ日をループする“時の渦”に囚われ、8月1日から抜け出せなくなったのだ。タイラはそこで先に時の渦に囚われていた不思議な少女・ミアに導かれ、ループを繰り返す者達“ルーパーズ”の一員に迎えられる。彼らはリーダーのサイモンを中心に、永遠に続く牢獄から抜け出そうとするのだが…!?

©VISUAL ARTS/Key

数々の名作を生み出してきたKeyが、実力派クリエイター陣を迎えて贈る新シリーズ・キネティックノベルを発表。その第1弾となる本作は、シナリオに『ひぐらし』や『うみねこ』シリーズでお馴染みの竜騎士07氏、原画にスタイリッシュな絵柄が目を引く・望月けい氏を迎えたタイムループADVだ。“8月1日”という一日を永遠にループする時の牢獄に主人公たちが囚われるという設定はまさに竜騎士07氏の『ひぐらし』を彷彿とさせる仕掛けであり、連想する人も多いことだろう。最近アニメの最新作が制作されたこともあるので尚更ともいえる。とはいえ『ひぐらし』がどちらかというとシリアスで重めな内容であるのに対し、本作はライトで明るめな内容と、同じタイムループモノでも別物だ。宝探しバカでポジティブキングな主人公・タイラは、何をやっても次の日にはリセットされるというタイムループならではのメリットを活かし、時の牢獄を遊びの場として楽しんでいく。このタイラの真っ直ぐで前向きな姿勢が絶望しかけていた仲間たちの心を揺さぶり、元の世界への帰還の大きな力となるのだ。特にルーパーズの先輩としてお目付け役となるミアが宝探しに夢中になり、タイラをお師匠様として慕っていくあたりも面白かった。タイムループという重くなりがちな題材を扱いながら、予想外にサクサク話が進んでいくのが本作の特徴ともいえるだろう。誰もが気軽に読めて楽しめる、万人向けのお手軽価格なノベル作品としてうまくまとまっていたように思う。

©VISUAL ARTS/Key

全体的には明るくライトな物語といっても、勿論それだけで終わるわけではない。主人公と一緒にループに巻き込まれたヒルダの親友、レオナは昏睡状態に陥ってしまうし、そもそも時の渦がなぜ生じたのか、タイラたちが何故巻き込まれたのかなど、謎やアクシンデントも散りばめられている。このあたりの真相が語られる後半の急展開には多くの人が驚き、胸を打たれるはず。完全にネタバレになってしまうので具体的には触れられないが、数々の感動的な作品を生み出してきたKeyらしい物語という印象を受けた。全3作となるキネティックノベルでは、次回以降のシナリオも実力派クリエイターの担当が予告されている。どんな内容にしろ、プレイして損はない作品となることは間違いなさそうだ。

（by RYO）