カルタグラ〜ツキ狂イノ病〜

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猟奇殺人事件の行方は?

©InnocentGrey

かつて警視庁に籍を置いていた高城秋五は、警官時代の上司から頼まれて良家の息女失踪事件の調査を引き受けることになった。失踪したのは、かつて秋五の恋人だった上月由良。上月家で秋五が出会う、由良と同じ顔を持つ妹、和菜。和菜は秋五に対して、姉を捜してほしいと懇願するが、父親の慶一郎は娘はすでに死んでいると話すのだった。同じ頃、上野で頻発する猟奇殺人事件。調査を進めるにつれ、交錯していく2つの事件。事件の真相は?

物語は猟奇殺人事件を扱っているだけあってシリアスで、重苦しい雰囲気に溢れたもの。特に物語の後半ではいくつもの事件、人間関係が絡み合って息もつかぬ展開が続いていく。プレイ時間はやや長めだけど、プレイヤーを途中で飽きさせないだけのシナリオになっている。マルチエンドのゲームなので、途中の選択によってルートが変わるわけだが、トゥルーエンド以外は事件を完全にほったらかしにしてしまったり、解決はするものの、どこか消化不良だったりする。そのぶん、トゥルーエンドを見たいという気にさせてくれるシナリオなのだ。もちろん、トゥルーエンドでは、すべての謎がすっきりと解き明かされることになる。ただし、すべてのエンディングを見る前にトゥルーエンドを見ることができてしまうのはちょっと問題かも。トゥルーエンドを見てしまうと、それ以上の謎はないので、シナリオの緊迫感がそがれてしまう。結末のわかっているミステリーはおもしろくないのと同じで、興味はＨシーンを見ることになってしまう。最も、これはミステリーというジャンルが構造的に抱えている問題のような気も。真犯人がルートによって変わってしまうのもどうかという気もするし、難しいところ。

物語を盛り上げてくれるCGのクオリティは非常に高い。萌え系の絵ではないけど、シナリオの雰囲気にあった、少し暗めのCGは、立ち絵も含めてとても魅力的。キャラの表情も生き生きと描かれている。特にメインヒロインの和菜などは表情の変化も多彩で、とてもかわいく描かれている。和菜は底抜けに明るくて前向きな女のコという設定なのだが、この作品がただ暗いだけのお話で終わらなかったのは、こうしたCGによるところも大きい。また、カットインを多用した演出も非常に効果的。ただ、カットインなどの演出を見るためには、画面効果をオンにしておく必要があるのだが、その場合メッセージスキップがかなり遅くなってしまう。かといって、画面効果をオフにしてしまうと、作品の魅力は激減。スキップしているときは、自動的に画面効果をオフにできるようになっていればより楽しめたと思う。

CGで注意してほしいのが、四肢切断や首なし死体などの、かなりグロテスクなCGがいくつかあるということ。猟奇殺人事件を扱っている以上やむを得ない部分はあるのだが、なまじ絵がきれいなだけにダメージも大きい。このゲームでは和菜以外のキャラも魅力的に描かれているのだが、そうしたキャラたちが容赦なく殺されるのは、精神的にクルものがある。数そのものは特別多いというわけではないが、グロに耐性のない人は要注意。

システム的には、ごくオーソドックスなコマンド選択型のAVG。選択肢が表示されているときはクイックセーブができないようになっているが、通常のセーブは可能なので問題なし。画面効果を多用しているためか、少々重い感じはするので、マシンパワーに自信がない人は、体験版をプレイしてみるといいだろう。

かなりいい感じの本作だが、最大の不満は主人公である秋五の存在意義がないこと。秋五は探偵という設定なのだが、華麗に事件を解決したりはしない。最初から最後までオロオロしているだけ。通常の会話シーンなどでは雰囲気のあるキャラなんだけど、肝心なときにあまりに役に立たなすぎ。トゥルーエンドのラストだけでも、しっかりと事件を解決してくれたら、もう少し爽快感のある物語になったような気がするだけに残念。とはいえ、完成度は高い作品なので、猟奇殺人事件、悲恋などという言葉に惹かれる人ならば、プレイして損はない作品だ。

   使い方

攻略

本作にはいくつかのバッドエンドがあり、シーン回収のためにはこれらをすべて見なければならない。本編中に登場する推理の選択肢のように直後にエンディングになるものもあるが、序盤の選択肢が影響するものも。バッドエンド回収のために序盤から再プレイしなければならないこともある。ひとつひとつの選択肢が重要なので選択ミスに気をつけよう。

（by Suno[レビュー]／水樹瞬[攻略]）